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■ 粗利益こそがビジネスのすべて

よく粗利益という言葉を聞くが、これは損益計算書で売上総利益のことを指す。
すべての会社にとって、決算書で最も重要な科目が、この粗利益だと言える。

会社の収益力を表す経常利益が一番大事なのでは?
絶対、税引後の当期純利益が大事でしょう!!
流動資産が大きくすることこそ、安定するのでは?
どれだけ体力があるかという純資産価額のはずだ!!
と考える人もいるかもしれない。

でも、それは間違い。
あくまで、経常利益や税引後の当期純利益が黒字になるのは、粗利益が十分、儲かっている場合だけ。
流動資産や純資産価額が大きくするためには、粗利益で稼いだお金が会社に貯まっている場合だけ。
もともと粗利益が小さいビジネスは、それ以外の部分を見る意味がないのだ。

では、いろいろな業種があるが、粗利益の金額又はその率(売上総利益を売上で割った率)は何%あればよいのだろうか。

商社なら、売上が1兆円あっても、粗利益率は5%しかない。
たったの5%だ。
しかし、単純に金額で考えると500億円にもなる。
一方、飲食業であれば、売上が100億円でも、粗利益は70%もある。
ただ、単純な金額で考えると30億円しかない。
飲食業で売上が1兆円もある会社は日本には存在しないし、これからも現れそうもない。
上場している商社で、売上が1兆円ない会社を探すのは難しい。

このように、単純に%や金額だけでは、判断できそうもない。
では、粗利益をどのように加工すればよいのだろうか。

実は、粗利益を社員数で割った金額(社員1人当たりの粗利益)が基準となる。
この金額が1,500万円あれば、すごく儲かっていないが、絶対に損もない。
これはどんな業種でも当てはまる。
製造業であっても、金融業であっても、サービス業であっても、飲食業であってもだ。
しかも、会社の大きさにも関係ない。
東証1部の会社であっても、1年前に設立した未公開会社であっても同じ。

さらに、社員1人当たりの粗利益が2,000万円に達すると、十分、儲かるビジネスと言える。
この会社の社員が30人いれば、粗利益で6億円。
問題なくIPO(上場)できる水準と言える。
もちろん、6億円という金額ではなく、30人で6億円というのがポイントだ。

一方、1,500万円以下のビジネスであれば、経費を削減する、金利が高すぎるなどの努力をしてもダメ。
ビジネスのやり方を根本的に変えるべき。
もっと儲かるビジネスにしなければ、経常利益や当期純利益をチェックしても意味もない。
さらに言えば、社員1人当たりの粗利益が1,500万円以下の会社は、IPO(上場)など夢で終わるだろう。

このように、粗利益と社員数が分かれば、IPO(上場)できるかどうかを判断できることになる。
なんだ、それだけかと勘違いしないで欲しい。
粗利益は、売上から売上原価を差し引いて計算する。
ところが、未公開会社の場合、この売上原価を正確に計算できていないことが多い。
そのため、社員1人当たりの粗利益を計算しても、IPO(上場)の判断材料にはならない。
それだけではんく、ビジネスの意思決定も間違う可能性があるということなのだ。

もちろん、IPO(上場)を目指す会社が作った決算書で、粗利益の計算が間違っていれば、監査法人がオッケーを出すはずがない。
必ず、IPO(上場)する前に原価計算基準が導入されて、過去の粗利益を含めて計算しなおすことになる。
IPO(上場)するときには過去5年分の決算書を有価証券届出書に記載する。
監査法人がチェックする過去2年分だけを修正したのでは、投資家は5年間を単純に比較できない。
最低でも5年間の粗利益は正確でなくてはいけない。

ここで原価計算と聞くと、工場で製品を作るときに使うというイメージがあるかもしれない。
別に、製造業でなくとも、サービス業であっても、原価計算を導入しなければ、正確な粗利益は計算できないのだ。
粗利益は、投資家にとってだけではなく、会社の社長にとっても重要な情報。
自分のビジネスの方向性が合っているのか、転換した方がよいのかを判断できる材料だからだ。

こんな情報は、誰も教えてくれないし、他の資料を見ても絶対にわからない。
そのため、IPO(上場)を目指していない場合でも、原価計算は絶対に導入すべきと言える。

(監修 公認会計士 青木寿幸)

投稿又は更新日時:2007年03月04日 18:22


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